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偏差、自差について詳しく

航海計画では方位の基準となる「北」が三つあります。それぞれの北を場合によって使い分けなければなりませんので、その概念を十分理解してください。
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1. 真北(しんぼく)と磁北(じほく)

地球は北極と南極とを通る地軸を中心に自転しており、子午線は両極で収束します。海図上の経線を北(上)へ辿ると北極に到達しますが、この経線の上方向を「真北」(しんぼく)といいます。そして、真北を基準とする方位の表し方を「真方位」(しんほうい)とよんでいます。航海計画では「潮流の流向」(潮流の流れる方向)を真方位で示すことになっています。


 Point 
 真北(しんぼく) : 地図の北(北極を指す)
 真方位(しんほうい) : 真北を基準とした方位
 真方位は潮流の流向に使用する

真北と磁北

航海において自船がどの針路を取っているかは、磁気コンパスを使って知ることができます。磁気コンパスは地磁気に従って「磁北」(じほく)を指しますが、図のように地球内部は大きな磁石と仮定でき、その磁石は地軸に対して少し傾いています。その結果、真北と磁北が若干ずれることになります。この偏りを「偏差」(へんさ)といいます。そして、磁北を基準とした方位の表し方を「磁方位」(じほうい)または「磁針方位」(じしんほうい)とよびます。


 Point 
 磁北(じほく) : 地磁気の北  磁気コンパスは地磁気の北(磁北)を指す
 磁方位(または磁針方位) : 磁北を基準とした方位
 偏差 : 真北に対する磁北の偏り量と方向  (例) 5゜E、 6.5゜W

偏差は地域によって異なり、経年でも変化します。 海図上で方位を示すコンパスローズ(compassrose)には内外二つの方位目盛があり、外側が真方位、内側が磁方位(磁針方位)となります。下のコンパスローズでは、磁方位が西へ 7゜10’偏っており「 7゜10’W」と記されています。これを「偏差 7゜10’ウエスタリー(westerly)」あるいは「西偏差 7゜10’」といいます。偏差に続いて「2003(1’.5W)とあるのは、ここに記された偏差の観測年が「2003年」であり、この地域は「年に1.5’ずつ偏差が西へずれていく」(年差1.5’W)という意味になります。この例とは逆に「5゜30’E」などと記されていれば、偏差は東へ偏っており「偏差 5゜30’イースタリ−(easterly)」あるいは「東偏差 5゜30’」などと呼ぶことになります。


 Point 
 コンパスローズの外側は真方位目盛
 コンパスローズの内側は磁方位目盛
 偏差はコンパスローズの内側に記されている


コンパスローズ

例のように偏差が西であると、磁方位は真方位から見ると常に偏差の分だけ西へ偏っています。そこで、磁方位で記された針路(例では磁針路 30゜)を真方位で表すには、磁方位から偏差分を差し引けばよいことが分かります。このとき値がマイナスとなった場合は、360゜を加えます。
 同様に、東偏差である場合、磁方位に偏差を加えれば真方位が求められます。このとき値が360゜を超えた場合は、360゜を差し引きます。


 Point 
 西偏差の場合 : 真方位 = 磁方位 − 偏差  マイナスの場合は 360゜を加算する
 東偏差の場合 : 真方位 = 磁方位 + 偏差  360゜を超えた場合は 360゜を減算する


  例1:上記のコンパスローズ(偏差 7゜10’W)で、磁方位 90゜を真方位で表すと、
      真方位 = 磁方位 − 西偏差 = 90゜ − 7゜ 10’ = 82゜50’(真方位)

  例2:磁針方位 70゜(偏差 5゜30’E)を真方位で表すと、
      真方位 = 磁方位 + 東偏差 = 70゜ + 5゜ 30’ = 75゜30’(真方位)
      ※ 磁方位と磁針方位は同じものです

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2. 磁北とコンパスの北

磁気コンパスは常に磁北を指すというのが原則ですが、実際はボート上の電動機や金属類といった磁性体に反応して磁北を指さない場合があります。磁気コンパスの指す北を「コンパスの北」、磁気コンパスによる方位を「コンパス方位」といいます。

偏差、自差

「磁北」に対して「コンパスの北」が東西どちらかへ偏ることを「自差がある」といいます。コンパス方位は各ボートごと異なりますから、海図上で針路を決めるには、磁方位または真方位に変換する必要があります。変換方法は「真方位と磁方位の関係」と同じで、以下の計算式が使えます。


 Point 
 自差(W)の場合 : 磁方位 = コンパス方位 − 自差  マイナスの場合は 360゜を加算する
 自差(E)の場合  : 磁方位 = コンパス方位 + 自差  360゜を超えた場合は 360゜を減算する


  例1:コンパス方位 270゜(自差 12゜W)を磁方位で表すと、
      磁方位 = コンパス方位 − 自差(W) = 270゜ − 12゜ = 258゜(磁方位)

  例2:コンパス方位 120゜(自差 7゜E)を磁針方位 で表すと、
      磁針方位 = コンパス方位 + 自差(E) = 120゜ + 7゜ = 127゜(磁針方位)
      ※ 磁方位と磁針方位は同じものです

航海計画の重視線(トランシット)を扱う問題では、磁方位とコンパス方位が分かっていて、それらから自差を求める問題が出てきます。上記の関係式を覚えていれば逆算できますが、参考までに次の関係式を示しておきます。


 Point 
 コンパス方位 > 磁方位 の場合 : 自差(W)= コンパス方位 − 磁方位
 コンパス方位 < 磁方位 の場合 : 自差(E)= 磁方位 − コンパス方位


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3. 真方位、磁方位、コンパス方位の相互計算

偏差、自差の復習として、以下のコンパス方位から真方位と磁方位を求めてみましょう。

コンパス方位から磁針方位と真方位を求める
問題コンパス方位偏差自差磁方位真方位
@ 270゜  8゜W  5゜W   ?    ?  
A 46゜  13゜W  6゜E   ?    ?  
B 314゜  9゜E  5゜E   ?    ?  
C 95゜  4゜E  9゜W   ?    ?  

全ての問題にコンパス方位、偏差、自差が与えられています。最初にコンパス方位と自差から磁方位を求めます。続いて、求めた磁方位と偏差から真方位を求めます。ピンと来ない場合は、下の参考図をご覧下さい。

方位の相互計算

重複しますが、以下の関係式を使って求めます。


 自差(W)の場合 : 磁方位 = コンパス方位 − 自差  マイナスの場合は 360゜を加算する
 自差(E)の場合  : 磁方位 = コンパス方位 + 自差  360゜を超えた場合は 360゜を減算する


 西偏差の場合 : 真方位 = 磁方位 − 偏差  マイナスの場合は 360゜を加算する
 東偏差の場合 : 真方位 = 磁方位 + 偏差  360゜を超えた場合は 360゜を減算する


コンパス方位から磁針方位と真方位を求める(正解)
問題コンパス方位偏差自差磁方位真方位
@ 270゜  8゜W  5゜W  270−5=265゜  265−8=257゜ 
A 46゜  13゜W  6゜E  46+6=52゜  52−13=39゜ 
B 314゜  9゜E  5゜E  314+5=319゜  319+9=328゜ 
C 95゜  4゜E  9゜W  95−9=86゜  86+4=90゜ 

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2004年 8月18日 初版


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